皮膚の難病と闘う患者さんに画期的な朗報が届きました。アメリカの製薬会社「クリスタル・バイオテック社」が、少しの刺激で水疱ができたり皮膚が剥がれたりする国指定難病「表皮水疱症」に対する日本初の遺伝子治療薬の承認を取得しました。この治療薬は世界で初めて患部に直接塗ることができる遺伝子治療薬として注目されています。
画期的な新薬「バイジュベックゲル」とは
世界初の塗布型遺伝子治療薬
2025年7月24日に厚生労働省から承認を取得した「バイジュベックゲル」(一般名:ベレマゲン ゲペルパベク)は、栄養障害型表皮水疱症(DEB)治療薬として日本で初めて承認された遺伝子治療用製品です。これまでの遺伝子治療薬は注射や点滴で体内に投与するものが一般的でしたが、この薬は皮膚創傷部に週1回塗布する局所ゲル剤という形態を採用しています。
疾患の根本原因に直接アプローチ
この治療薬は、ヒトCOL7A1遺伝子の機能的なコピーを投与することで、栄養障害型表皮水疱症の根本原因を標的とし、傷の治癒と持続的な機能的なVII型コラーゲンタンパク質の発現を再投与により実現するように設計されています。DEB患者で不足するVII型コラーゲンタンパク質を発現させることで、病気の根本的な治療を目指します。
栄養障害型表皮水疱症(DEB)とは
栄養障害型表皮水疱症は、皮膚の脆弱性、表皮と真皮の剥離(水疱形成)、水疱治癒後の瘢痕化や稗粒腫形成を特徴とする遺伝性の希少疾患で、早ければ出生時に発症する重篤な病気です。患者さんの皮膚は健康な人と比べて非常にデリケートで、日常生活の中でのちょっとした摩擦や圧迫でも、すぐに水ぶくれや傷ができてしまいます。
自宅治療も可能になる画期的な利便性
在宅投与が初めて認められた遺伝子治療薬
今回の承認で特筆すべきは、日本での承認により、自宅または医療施設での投与が可能となり、患者またはその家族による投与の選択肢が提供されることです。これはカルタヘナ法に基づく第1種使用規程の審査における評価と環境安全確認を経て、日本で初めて在宅投与が承認された遺伝子治療薬となります。
良好な安全性プロファイル
在宅投与が可能になったのは、バイジュベックの良好な安全性プロファイルと、適切に投与された場合の環境への拡散リスクが最小限であることが評価されたためです。
日本での臨床試験結果
全患者で治療目標を達成
日本人患者を対象に実施された非盲検延長試験では、試験を完了した4人全員が、主要評価項目である「6か月時点での創傷の完全閉鎖」を達成という優秀な結果を示しました。また、日本人患者においても良好な忍容性(副作用の少なさ)を示し、安全性プロファイルもこれまでの試験結果と一貫していました。
海外での実績と今後の販売予定
世界展開での確実な実績
バイジュベックは既に米国では2023年5月に、欧州連合(中央審査方式)では2025年4月に承認されており、海外での実績も積み重ねられています。
2025年末までの販売開始を予定
日本での販売開始時期については、現在進行中の薬価収載手続きに依存するものの、2025年末までに予定されているとしています。
患者・医療関係者からの期待の声
長年待ち望まれた根本治療
笠本浩クリスタル・バイオテック ジャパン代表取締役社長は「日本における栄養障害型表皮水疱症の患者さんは、あまりにも長い間、慢性的かつ生活に深刻な影響を及ぼすこの疾患に対して、有効な根本治療を受けられずに苦しんできた。バイジュベックの日本における承認は、治療薬を切実に待ち望んでいた患者さんにとって、画期的な進展である」とコメントしています。
患者さんの生活を変える新しい希望
この世界初の塗るタイプ遺伝子治療薬の承認により、これまで限られていた治療選択肢が大幅に広がり、患者さんとその家族の生活により多くの希望をもたらすことが期待されます。特に、自宅での治療が可能になることで、患者さんの生活の質の向上にも大きく貢献することが期待されています。
長年にわたって対症療法が中心だった栄養障害型表皮水疱症の治療に、ついに病気の根本的な原因にアプローチできる画期的な治療法が登場しました。この革新的な治療薬により、多くの患者さんが新たな希望を抱けるようになることでしょう。