京都大学iPS細胞研究所の研究グループは、ヒトiPS細胞から“あご”の骨(顎骨)を再現したオルガノイド(ミニチュア臓器)の作製に世界で初めて成功しました。この成果は、顎骨の再生治療や、国指定難病である骨形成不全症の新たな治療法開発に大きな期待をもたらしています。
研究のポイント
- ヒトiPS細胞から顎骨オルガノイドを作製
神経堤細胞を介して、顎骨の立体構造を持つオルガノイドを作り出すことに成功しました。 - マウスへの移植で再生能力を確認
作製した顎骨オルガノイドをマウスに移植したところ、血管が侵入し、成熟した骨組織として機能することが確認されました。 - 骨形成不全症の疾患モデルも構築
骨形成不全症患者由来のiPS細胞を用いてオルガノイドを作製した結果、病態をよく再現できる疾患モデルができ、遺伝子修復による正常化も確認されました。
背景と意義
- 顎骨の特殊性と治療の難しさ
顎骨は口腔内の細菌感染や歯周炎など多様なリスクにさらされ、一度破壊されると元に戻りにくい特徴があります。また、発生過程が特殊で、従来の多能性幹細胞からの分化誘導が困難でした。 - 再生医療への応用
今回のオルガノイドは動物由来成分を使わずに作製されており、将来的な移植治療や顎骨疾患の病態解析、創薬研究など幅広い応用が期待されます。 - 難病治療への道
骨形成不全症のような遺伝性疾患の患者由来iPS細胞を使ったモデルで、病気の仕組み解明や新たな治療法の開発が進む可能性があります。
今後の展望
- 顎骨再生治療の実現
顎骨の欠損や損傷に対する新しい再生医療の選択肢として、臨床応用が期待されます。 - 疾患モデルによる創薬・治療法開発
難治性骨疾患の病態解析や創薬スクリーニングへの活用が見込まれます。
まとめ
この研究は、ヒトiPS細胞から顎骨の構造と機能を持つオルガノイドを作製し、再生医療や難病治療の新たな道を切り開く画期的な成果です。今後、より多くの患者さんに恩恵が届くことが期待されます。
ソースURL: https://news.ntv.co.jp/n/ytv/category/society/yt3b03ef654bf544f88189baddfd86a6f5