未診断疾患イニシアチブ(IRUD)、日本希少疾患コンソーシアム(RDCJ)、日本製薬工業協会(製薬協)は2026年2月6日、医療従事者を対象とした定量・定性調査の結果を踏まえ、難病・希少疾患領域における課題解決の方向性を示す提言を公表しました。
製薬企業が取り組むべき3つの重点課題として①情報提供活動の強化、②新生児マススクリーニングの拡充、③研究開発の加速を挙げるとともに、専門人材育成の強化、患者家族視点の重視を掲げています。
提言の背景と調査の概要
難病・希少疾患の患者や家族は、患者数が少なく確定診断に時間がかかる、治療法が限られる、社会的な理解や支援が不十分など、さまざまな課題に直面しています。これらの課題を解決するため、製薬協は2021年に難病・希少疾患タスクフォースを設置し、患者調査(2023年)、医療従事者調査(2024年)を実施・公表してきました。
IRUDは2015年から日本医療研究開発機構(AMED)支援のもと、全国規模で未診断・希少疾患の診断支援体制を構築しており、2025年3月末時点で2万8,207人・9,908家系がエントリーし、8,090家系の解析を完了、3,894家系で診断確定(診断率48.1%)という成果を示しています。また、新規遺伝子・疾患・表現型を50疾患同定、臨床遺伝専門医や遺伝カウンセラーの人材育成(年間4,000〜1万人)も進めています。
製薬企業が取り組む3つの重点課題
①情報提供活動の強化
2024年に実施された調査では、「希少疾患に対する認知・理解を深める機会が限られている」との回答が半数を超え、医療従事者向け啓発の有効な実施主体として61.2%が製薬企業を挙げました。提言では、製薬協会員企業の難病・希少疾患関連情報の公開方法に関して業界全体での見直し、Rare Disease Dayシンポジウムの継続開催、疾患啓発と広告の境界の明確化によるコンプライアンス環境整備などを提示しています。
②早期診断体制の強化(新生児マススクリーニングの拡充)
「早期診断を実現するための体制整備が遅れている」との回答が51.6%に上りました。提言では、新生児マススクリーニングの拡充を政策課題に位置付け、科学的根拠に基づく対象疾患の選定や自治体間格差の是正、専門医療機関との連携強化、保護者への説明およびフォロー体制の整備を挙げています。
③研究開発の加速
難病・希少疾患治療薬の開発は、ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス解消の観点からも政策的優先課題に位置付けられています。自身の希少疾患の治療薬が海外では使用できるが日本では使用できないと仮定した場合、81.3%の患者が「日本で治療できるようになるまで待ちたい」と考えており、体調面での海外渡航や高額負担は難しいと感じていることが示されています。提言では、産学連携による研究基盤活用、臨床研究・治験環境の整備、薬事制度や薬価制度の在り方を含めた包括的検討を掲げています。
専門人材育成の強化と患者家族視点の重視
希少疾患医療を担う専門人材の育成機会の拡充と持続可能性の担保も重要課題として位置付けられています。希少疾患は疾患数が多く、専門医の地域偏在や診療経験の限界が構造的課題となっており、RDCJは産患学官民が連携する横断的プラットフォームとして、専門家同士が分野を越えて議論・共有できる「共創の場」を整備する役割を担います。
患者・家族の視点を政策・研究・情報発信に反映させる必要性も強調されており、RDCJは患者団体を含む産患学官民の5者協働を理念に掲げ、「誰一人取り残さない希少疾患エコシステム」の実現を掲げています。診断・治療・創薬・社会支援を包括的に結ぶ持続的枠組みの構築を通じ、希少難病患者が孤立せず、適切な医療と支援を受けられる社会の実現を目指しています。







