京都大学iPS細胞研究所の後藤慎平教授らの研究グループが、人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)で作った「ミニ組織」を使い、肺の難病である特発性肺線維症の再現に成功したと発表しました。あわせて治療薬の候補となる物質の特定にも成功しており、難病治療の新たな展望が開けています。​

特発性肺線維症とはどのような疾患か

特発性肺線維症(IPF: Idiopathic Pulmonary Fibrosis)は、肺の組織が原因不明で次第に繊維化(硬化)していく指定難病です。「特発性」とは原因不明を意味しており、肺の機能が徐々に失われていくため、呼吸困難が進行します。治療法の確立が難しく、患者さんとご家族にとって大きな負担となっている疾患です。​

iPS細胞による疾患モデルの意義

今回の研究では、iPS細胞から肺の細胞を分化・培養して作製した「ミニ組織(オルガノイド)」を使って、実験室内で特発性肺線維症の病態を再現することに成功しました。​

難病の研究において、患者さんから採取できる組織には限りがあり、病気の進行メカニズムの解明や新薬候補のスクリーニングには多くの困難が伴います。iPS細胞を使った疾患モデルは、以下の点で革新的な研究ツールとなります。​

  • 患者さんへの侵襲なく、疾患の組織を大量に確保できる
  • 遺伝的背景を持った個別の疾患モデルを作成できる
  • 多数の薬剤候補を効率よくスクリーニングできる

治療薬候補の特定へ

今回の研究では、疾患モデルの再現にとどまらず、治療薬となりうる候補物質の特定にも成功しています。これは、iPS細胞技術を活用した「疾患モデル→薬剤スクリーニング」というアプローチが実際に機能することを示す成果です。特発性肺線維症のように原因が不明で治療法が確立していない難病において、治療薬候補の特定は患者さんへの希望につながる大きな前進です。​

難病治療研究の新たな可能性

今回の京大の成果は、iPS細胞技術が希少難病の治療薬開発において持つ可能性を改めて示しています。難病は約7,000種類以上存在し、多くは患者数が少ないため製薬企業による研究開発が進みにくいという課題があります。iPS細胞を用いた疾患モデルの構築と薬剤スクリーニングは、こうした希少難病における新薬開発の加速に大きく貢献することが期待されます。

ソースURL: https://www.tokyo-np.co.jp/article/468362

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