グラクソ・スミスクライン(GSK)は2025年7月31日、再発又は難治性の多発性骨髄腫に対する抗体薬物複合体「ブーレンレップ®」の併用療法について、欧州連合(EU)での承認を取得したと発表しました。この承認により、治療が困難とされる血液がん患者に新たな希望がもたらされることが期待されています。
世界初のBCMA標的抗体薬物複合体による効果
ブーレンレップは、BCMA(B細胞成熟抗原)を標的とした初の抗体薬物複合体(ADC)として開発された治療薬です。今回の承認は、2つの大規模第III相臨床試験で示された治療効果に基づいています。
DREAMM-7試験の卓越した結果
無増悪生存期間(PFS)を約3倍に延長という改善が確認されました
- ブーレンレップ併用療法:36.6カ月
- 従来の標準治療:13.4カ月
さらに重要なことに、死亡リスクが42%低下し、3年時点での生存率は74%(対照群60%)を達成しています。
EU承認の2つの併用療法
今回EUで承認されたのは、以下の2つの併用療法です。
BelaVd療法
- ブーレンレップ + ボルテゾミブ + デキサメタゾン
- 1ライン以上の治療歴を有する患者が対象
BelaPd療法
- ブーレンレップ + ポマリドミド + デキサメタゾン
- 1ライン以上の治療歴(レナリドミドを含む治療を含む)を有する患者が対象
専門医療機関と地域医療機関の両方で治療可能
この治療法の大きな利点は、あらゆるがん治療環境でさまざまなタイプの患者さんへ投与できることです。従来の高度な治療法とは異なり、専門医療機関だけでなく地域の医療機関でも治療を受けることが可能となります。
安全性プロファイルと副作用管理
臨床試験では、眼に関する副作用に対して適切な投与間隔の延長や減量により、治療中止率は約9%に抑えられました。主な副作用として血小板減少症、好中球減少症、下痢などが報告されていますが、管理可能な範囲とされています。
世界展開の加速
ブーレンレップの併用療法は現在、日本、英国、カナダ、スイスで既に承認済みで、今回のEUを含め6つの国・地域での承認を達成しました。また、米国や中国でも審査が進んでおり、画期的治療薬指定や優先審査の対象となっています。
多発性骨髄腫患者への新たな希望
多発性骨髄腫は世界で3番目に多い血液がんで、治療可能でありながら治癒困難とされる疾患です。世界で毎年18万人以上が新たに診断され、欧州だけでも5万人以上の患者が存在します。
GSKのR&Dオンコロジー部門グローバルヘッドのヘシャム・アブドラ氏は「今回の承認は、EUの再発又は難治性の多発性骨髄腫患者さんにとって画期的な瞬間です。専門医療機関と地域の医療機関の両方で治療を受けられるという選択肢も提供します」とコメントしています。
今後の展望
この画期的な治療法により、従来治療選択肢が限られていた再発・難治性多発性骨髄腫患者の治療成績が改善することが期待されます。