中外製薬株式会社は2025年5月13日、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療用の遺伝子治療製品「エレビジス®点滴静注」(一般名:デランジストロゲン モキセパルボベク)について、日本での条件及び期限付製造販売承認を厚生労働省より取得したと発表しました。
承認の詳細
この承認は、歩行可能なDMDの4歳~7歳の男児を対象としたグローバル第III相臨床試験(EMBARK試験)の最大2年間の成績を含む臨床試験データに基づいています。投与対象は以下の条件をすべて満たす患者です。
- DMDのうち、エクソン8及び/又はエクソン9の一部又は全体の欠失変異を有さない患者
- 抗AAVrh74抗体が陰性である患者
- 3歳以上8歳未満の歩行可能な患者
投与前には抗AAVrh74抗体陰性の確認が必要で、この検査にはロシュ・ダイアグノスティックス株式会社のコンパニオン診断薬「エクルーシス試薬Anti-AAVrh74」が使用可能です。
エレビジスの特徴
エレビジスは、1回の投与でDMDの原因となるジストロフィンの欠損を補うよう設計された根本的な治療法です。標的とする骨格筋、呼吸筋及び心筋において、短縮型ジストロフィンの発現を介し、DMDの原因に直接働きかける遺伝子治療製品です。
米国では2023年6月にDMDに対する初の遺伝子治療用製品として承認されており、欧州でも2024年5月に申請されています。
デュシェンヌ型筋ジストロフィーについて
DMDは小児の早期から急速に進行する希少な遺伝性筋疾患で、世界では男児の約5,000人に1人程度で発症するとされています。この疾患は歩行能力、上肢機能、肺機能、心機能が失われ、致死的な転帰をたどります。
DMDは筋肉にかかわるタンパク質であるジストロフィンの産生に影響を及ぼすDMD遺伝子の突然変異が原因で発症します。ジストロフィンは筋線維を強化し、筋収縮時の損傷から保護する重要なタンパク質ですが、DMD遺伝子の変異により機能性ジストロフィンを産生できなくなり、筋細胞の損傷感受性が高まり、筋組織の瘢痕化や脂肪化が進行します。
中外製薬の代表取締役社長CEOの奥田修氏は「エレビジスが希少で難治性のDMDに対する遺伝子治療用製品として承認されたことを大変嬉しく思います。DMDの治療が限られている中、新たな治療選択肢となるエレビジスを日本の患者さんに一日も早くお届けできるよう、発売に向け準備を進めてまいります」とコメントしています。
承認条件と期限
本承認は条件及び期限付きで、期限は3年となっています。この期間中は長期の有効性及び安全性の確認を目的とした臨床試験と全症例を対象とした製造販売後調査が行われます。また、DMDに関する十分な知識と経験を持つ医師が、適切な医療機関で使用することが求められています。
ソースURL: https://www.chugai-pharm.co.jp/news/detail/20250513181500_1491.html