画期的な治療薬の日本での臨床試験がスタート

ルンドベック・ジャパン株式会社は2025年6月26日、希少な神経疾患である多系統萎縮症(MSA)に対する世界初の治療薬候補「amlenetug」の第III相MASCOT試験において、日本での最初の患者さんへの投与を開始したと発表しました1。この画期的な治療薬は、現在有効な治療法が存在しない深刻な難病に対する新たな希望となることが期待されています。

多系統萎縮症(MSA)とは

深刻な神経変性疾患

多系統萎縮症は急速に進行する希少な神経系疾患で、脳の神経細胞に損傷を与える病気です1。この疾患の特徴は以下の通りです。

  • 発症年齢: 通常55~60歳の間に症状が現れる
  • 生存期間: 症状発現後6~9年程度
  • 患者数: 日本では約1万人と推定(2023年度末現在)
  • 指定: 日本では難病に指定されている

多様で深刻な症状

MSAはα-シヌクレインというタンパク質が異常に蓄積し、平衡感覚や運動、身体の正常な機能をつかさどる脳の領域を損傷することで発症します。

主な症状には、以下のものがあります。

  • パーキンソン病に似た筋肉の制御障害
  • 排尿障害
  • 頻繁な転倒
  • 高次機能障害(認知症)
  • 呼吸器系の障害(主な死因)

これらの症状は発症から3年以内に現れ、患者さんの生活に大きな影響を与えます。現在のところ、MSAの治療法や進行を遅らせる治療法は存在していません。

革新的治療薬「amlenetug」の特徴

amlenetugはヒトモノクローナル抗体で、細胞外α-シヌクレインの全ての主要な形態を認識し結合することにより、α-シヌクレインの取り込みを阻害し、凝集の伝播を抑制します。

この薬剤は以下の特徴があります。

  • ルンドベックとGenmab A/S社との共同研究により開発
  • 日本では「先駆的医薬品指定制度」の対象品目に指定
  • 希少疾病用医薬品にも指定
  • 4週間ごとに点滴静注で投与

国際的な研究発表

ルンドベックは2025年5月9~11日に米国ボストンで開催された国際多系統萎縮症学会において、以下の重要なデータを発表しました。

  • 第II相AMULET試験の結果
  • 患者さんの視点から得られた知見
  • MSAの自然歴研究であるTALISMAN試験の新たな知見

日本の患者さんへの希望

治療選択肢の拡大

ルンドベック・ジャパンの代表取締役社長ルネ・アイラ・アンデルセン氏は、「amlenetugは、現在治療法が存在しない非常に重篤な疾患に対する有望な新規治療候補です。MSAを患う患者さんとそのご家族の生活に大きな変化をもたらす可能性があります」とコメントしています1

早期承認への取り組み

同社は「この深刻な衰弱性疾患に苦しむ患者さんにとって有意義な変化を一刻も早くもたらすことを目指している」として、amlenetugの開発を加速させる意向を示しています1

今後の展望

この第III相試験の開始は、MSA患者さんとその家族にとって大きな希望となります。現在治療法が存在しない難病に対する世界初の治療薬候補として、amlenetugの臨床試験結果が注目されています。

ルンドベックは70年以上の神経科学における経験を持つ、脳の健康に特化したバイオ医薬品会社として、治療法がほとんどない、または全くない人々を対象とした革新的な医薬品の開発に注力しており、この取り組みがMSA患者さんの未来を変える可能性を秘めています。

ソースURL: https://www.lundbeck.com/content/dam/lundbeck-com/asia/japan/press/news-release/20250626_Lundbeck%20to%20share%20pipeline%20data_MSA.pdf

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