北海道大学病院は、新生児スクリーニング検査により難病の「重症複合免疫不全症(SCID)」を道内で初めて発見し、治療に成功したと発表しました。昨年夏に同病院で生まれた男児は、早期発見と迅速な治療により免疫機能を回復し、2025年1月に退院することができました。

重症複合免疫不全症(SCID)とは

SCIDは免疫細胞の一つであるT細胞が生まれつきない極めて深刻な遺伝性免疫不全症です。5万人に1人程度の発症とされる希少疾患で、患者は重い感染症に何度もかかりやすく、造血幹細胞移植で治療しないと1歳までにほぼ全員が命を落とすとされています。

この病気の恐ろしさは、通常なら問題のない軽微な感染でも生命に関わる重篤な状態になってしまうことです。そのため、早期発見と迅速な治療開始が患者の生命を救う鍵となります。

奇跡的な早期発見と治療経過

迅速な診断プロセス

今回治療された男児のケースでは、生後10日でSCIDが疑われ、精密検査の結果、生後1カ月でSCIDと確定診断されました。この迅速な診断が、その後の治療成功に大きく貢献しました。

慎重な治療プロセス

男児は感染症を避けるため無菌室に入院し、昨年11月に造血幹細胞移植を受けました。その後、正常な免疫や血液の細胞が作られ免疫が回復し、今年1月下旬、生後5カ月で退院することができました。

担当医である同病院小児科の植木将弘医師(43歳)は「男児は早期の発見、診断、治療が奏功した。まれな病気だが検査は重要だ」と述べています。

新生児スクリーニング検査の重要性

2つの検査システム

新生児スクリーニング検査には2種類があります。

マススクリーニング検査

  • 都道府県と指定都市が公費負担で無料実施
  • 1977年から開始
  • 道内では26種の病気を調査
  • 新生児のほぼ全員が受検
  • 2023年度は2万4,688人が受検し、25人の病気を発見

追加検査

  • 公費負担なしの有料検査(6,600円)
  • 2020年11月から実施
  • SCIDや脊髄性筋萎縮症など8種の病気を調査
  • 受検率は道内新生児の70.5%にとどまる
  • 開始から2024年末まで4年間で6万9,994人が受検し、8人の病気を発見

検査方法と結果通知

検査は産科で生後4~6日にかかとからごく少量の血液を採取して行われ、一度の採血で両方の検査が受けられます。結果は正常なら1カ月健診時に知らされ、病気が疑われる場合は直ちに専門医療機関での精密検査が行われます。

今後への希望 - 無料化への動き

2025年度中の無料化実現へ

北海道と札幌市は、追加検査で調べる8疾患のうち、SCIDと脊髄性筋萎縮症(SMA)の2疾患の検査を2025年度中に無料化する方向で準備を進めています。両自治体は国の実証事業に初めて応募し、参加が認められれば準備が整った段階で無料化に踏み切る見通しです。

専門医からの呼びかけ

北海道希少疾病早期診断ネットワーク代表理事の山田雅文医師(60歳、酪農学園大教授)は「早く発見し治療すれば、命を落とすことなく、根治や日常生活を送ることができる。追加検査も受けてほしい」と述べており1、より多くの家族に検査の重要性を理解してもらいたいと呼びかけています。

この成功事例は、新生児スクリーニング検査の価値を改めて証明するものであり、今後より多くの赤ちゃんの命を救う希望となることでしょう。

ソースURL: https://mamatalk.hokkaido-np.co.jp/article/331609/

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