以下の動画について、まとめました。

25分程度の動画です。お時間ある際にぜひご覧ください。

治療法が見つかっていない希少な病気で苦しむ患者さんに、一日も早く薬を届けたい――。そんな強い願いを胸に、日本の研究者たちが新薬開発の困難な道のりに挑んでいます。かつて「創薬大国」と呼ばれた日本ですが、今、その道のりには「死の谷」と呼ばれる深い課題が横たわっています。この記事では、この「死の谷」の実態と、それを乗り越えようとする情熱的な挑戦について、詳しく解説します。

「死の谷」とは?日本の新薬開発を阻む壁

新薬の開発には、動物や人での安全性や効果を確認する「臨床試験」など、10年以上の長い時間と何十億、時には100億円もの莫大な資金が必要となります。しかし、日本の現状では、この過程で開発が頓挫してしまうケースが多く、「死の谷」と呼ばれています。

この「死の谷」に陥る主な原因は、官民の支援や連携が不十分であること、そして臨床試験にかかる莫大な費用を調達できないことにあります。特に大学発のベンチャー企業は、優れた技術を持っていても、この資金や情報、支援を得ることが難しく、実用化に至らない大きな課題に直面しています。

希少疾患に苦しむ人々への希望:勝田準教授と「ステープル核酸」の挑戦

熊本大学の勝田陽介準教授も、この「死の谷」に挑む研究者の一人です。彼が目指すのは、国内で5万人未満、世界中で3億人の患者がいると推定される「希少疾患」の治療薬開発です。これらの病気の半数は子どもが罹患し、大人になる前に亡くなるケースも多く、そのほとんどに治療法がありません。

勝田準教授らが開発した「ステープル核酸」は、病気の原因となっているタンパク質の量を調節できる独自の技術です。譲る君の病気のように、遺伝子が変異して異常なタンパク質が作られることで発症する病気に対し、この技術が薬となる可能性を秘めています。実際に、複数の病気に対して薬となりうるデータが得られています。

勝田準教授の原動力は、自身の持つ技術で「こういう病気を絶対に治す」という強い思いです。彼の研究室で学ぶ長谷川優和さんも、祖母が難病を患ったことをきっかけに研究に励んでいます。

「死の谷」を超えるために:ベンチャー企業「ステープバイオ」の設立と資金調達

勝田準教授は、自身の優れた技術を実用化し、「死の谷」を乗り越えるため、ベンチャー企業「ステープバイオ」を立ち上げました。共同創業者には製薬企業出身の谷川清氏を迎え、経営戦略などを担っています。

ステープバイオは、設立から6年で薬の開発を大きく前進させました。昨年10月にはステープル核酸の実験結果が医学系の大学関係者に説明され、「素晴らしい」「世界中の人が欲しがるような技術になる」と高い評価を受けました。

この研究成果に興味を持った銀行や製薬系の投資会社から、4億6000万円もの投資が集まりました。さらに、彼らはビジネスコンテストの世界大会にも挑み、希少疾患の認知度向上と、治療薬開発への取り組みを広く知ってもらう機会を得ました。

創薬大国からの転落?日本の製薬業界が抱える構造的問題

日本はかつて「創薬大国」と呼ばれていましたが、医薬品の世界売上上位300品目における国内企業が作った製品の数は年々減少しています。新型コロナウイルスのワクチン開発でも海外に遅れをとり、2022年には4兆6000億円もの赤字に転じています。

この状況を打開しようと、政府は医薬品産業を日本の成長を担う基幹産業と位置づけ、国内外からの投資や人材を呼び込む体制づくりを進めると宣言しました。しかし、海外の業界団体からは、国が決定する薬の「薬価(価格)」の改定が問題視されています。高齢化による医療費増加を抑えるため、国は毎年のように薬の価格を見直し、今年度は新薬の43%の価格を引き下げました。この「新薬の価値が正しく評価されない」状況が続けば、世界からの投資は集まらないと懸念されています。

待つ患者さんのために:止まらない研究者たちの歩み

資金調達や国の制度といった大きな壁に直面しながらも、研究者たちは開発を進めるしかありません。わずか半年でオーダーメイドの薬が開発されたアメリカの事例があるように、不可能ではないと信じています

血管が異常に伸びる病気を患う平井譲る君は、つい先日も19回目の手術を終え、退院しました。薬がない現状では、手術を繰り返さなければ生きていけないのです。

長谷川さんの祖母は、治療薬が届くことなく昨年亡くなりました。その悔しさを胸に、彼女は「技術はあるのに届ける術がないのはなぜ」という問いを抱え、それでも研究を続けています。

研究者たちは、次に10億円を超える資金を集める必要があります。これは、臨床試験に進めるかどうかの「一番の勝負どころ」だと考えています。多くの人々の思いが少しずつ大きくなり、彼らを後押ししています。

「死の谷」の向こうに薬を待つ人がいます。勝田準教授をはじめとする研究者たちは、その希望の光を届けるために、今日も歩みを進めています。彼らの活動に興味を持ち、見守り続けることが、治療開発の第一歩となるでしょう。

ソースURL: https://www.youtube.com/watch?v=q_zK2qB2xKs

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