大阪大学の研究グループが、先天性自己炎症性疾患であるエカルディー・グティエール症候群(AGS)の主症状である脳症が、脳内にたまった1型インターフェロン(IFN)によって起こることを明らかにしました。これまで原因が十分に分かっていなかった病態に、具体的な手がかりが示された研究です。

AGSとはどんな病気か

AGSは、核酸代謝に関わる遺伝子の異常によって、自己核酸に対する自然免疫が過剰に働いてしまう病気です。1型IFNが過剰に産生される「インターフェロノパシー」と呼ばれる疾患群のひとつで、脳症を主症状とします。

特徴的なのは、脳室拡大、脳室周辺の石灰化、白質変性など、脳のとくに脳室周辺に強い症状が出ることです。しかし、なぜその部位に症状が集中するのか、どの細胞が1型IFNを作っているのかは長年不明でした。

研究で何が分かったのか

研究グループは、AGS脳症を再現するモデルマウスを使い、1型IFNシグナル経路を遮断すると脳症が完全に消失することを確認しました。これにより、脳症の形成に1型IFNが不可欠であることを示しました。

さらに、脳室内の1型IFN濃度が血清より高いことを突き止め、脳内で直接1型IFNが過剰に作られていることを明らかにしました。1型IFNによって誘導される遺伝子の発現も、脳室周辺で特に高いことが分かり、病変がその周辺で強く出る理由が裏づけられました。

どの細胞が関わっていたのか

今回の研究では、神経細胞やアストロサイトなど、脳内の主要な細胞ごとにADAR1の機能を低下させたマウスも作成されました。その結果、どの細胞群も1型IFN産生に関与していましたが、特にアストロサイトの関与が大きいことが示されました。

ADAR1はAGSの原因遺伝子のひとつで、RNA編集に関わる酵素です。研究グループは、Z型RNAへの結合がうまくいかなくなる変異を持つマウスを作り、AGS脳症をよく再現するモデルの作成にも成功していました。今回の成果は、そのモデルを使って病態の核心に迫ったものです。

治療法開発への意味

この研究の大きな意義は、AGSの病態を再現できるモデルマウスができたことで、薬の効果を評価しやすくなった点にあります。これまで、候補薬が脳内にどの程度届くのか、どの投与経路が有効なのかを確認することが難しかったのですが、今後は実験的に検証しやすくなります。

とくに、1型IFNシグナル経路を遮断する薬剤の開発や評価が進めば、AGSの治療法確立に向けた動きが加速すると期待されています。

研究のポイント

  • AGS脳症は、脳室内に蓄積した1型IFNで形成されることを世界で初めて明らかにした。
  • 1型IFNは脳内、とくにアストロサイトや神経細胞から過剰産生されていた。
  • 脳症形成には1型IFNシグナルが必須だった。
  • 研究モデルにより、今後の薬剤評価と治療法開発が進めやすくなった。

AGSのような希少な自己炎症性疾患では、病態の理解そのものが治療法開発の出発点になります。今回の成果は、その出発点を大きく前に進める研究といえます。

ソースURL: https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2026/20260319_1

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