山梨県は全国に先駆けて「難病患者枠」による職員採用を実施し、2025年度から3名の難病患者が県職員として新たなスタートを切っています。この画期的な取り組みにより、これまで就労に不安を抱えていた難病患者に新たな希望がもたらされています。
全国初の「難病患者枠」採用制度
山梨県が導入したこの制度は、難病を抱える方々の活躍の場を広げることを目的とした革新的な取り組みです。従来の採用制度では、病気による体調変動を理由に就労を諦めざるを得ない方も多く存在していましたが、この制度により新たな就労機会が創出されています。
ベーチェット病と線維筋痛症を併発した女性職員の体験
今回採用された20代の女性職員は、2つの難病を抱えながらも前向きに働いています。
病気の発症から診断まで
2023年5月に喉の痛みを感じることから始まった体調不良。複数の検査を経ても原因が分からず、6月にようやく**「ベーチェット病」**と診断されました。ベーチェット病は、臓器や全身の皮膚に炎症を引き起こす難病で、薬で症状を抑えることはできますが、原因は不明で完治はしません。
さらに12月の復職時期には**「線維筋痛症」**も併発し、全身に激しい痛みや倦怠感が現れるようになりました。
前職での苦悩
当時勤務していた半導体メーカーでは、診断を機に6か月間の休職を余儀なくされました。復職後も症状の予測が困難で、「いつ、どんな状況で症状が出るか自分にもわからない。会社にもどう相談したらよいのかわからなかった」と当時の心境を振り返っています。
自分の意思で体をコントロールできないもどかしさから、自身を責めることもあったといいます。
新しい職場環境での働きやすさ
山梨県の職場では、難病患者に配慮した柔軟な勤務環境が整備されています。
具体的な配慮内容
- 柔軟な勤務時間: その日の体調に応じて勤務時間を短縮可能
- テレワークの活用: 体調に合わせた在宅勤務
- 休養環境の確保: 体調悪化時には別室にベッドを用意
職員の声
女性職員は現在の就労環境について「体調の面でも気持ちの面でも、安心感があります」と語っており、書類審査などの事務業務を担当しています。
社会への想いと今後への決意
この女性職員は「今は頑張りたいという思いが強い」と充実した様子で話し、「今後もこの採用枠が続くよう、難病でも働けるということを自分が証明したい」と力強く語っています。
制度の社会的意義
先駆的取り組みの価値
山梨県の「難病患者枠」採用制度は、全国の自治体や企業にとって重要なモデルケースとなります。この取り組みが成功すれば、他の自治体や民間企業にも同様の制度が広がる可能性があります。
期待される効果
- 就労機会の拡大: 難病患者の社会参画促進
- 多様性の推進: インクルーシブな職場環境の実現
- 社会保障制度の改善: 働く意欲のある難病患者への支援強化
- 偏見の解消: 難病患者の能力と可能性への理解促進
まとめ
山梨県の「難病患者枠」採用制度は、難病を抱える方々が安心して働ける環境づくりの画期的な一歩です。適切な配慮と理解があれば、難病患者も十分に社会で活躍できることを証明するこの取り組みが、全国に広がり、より多くの方々に希望をもたらすことが期待されます。
この女性職員の「難病でも働けるということを証明したい」という強い意志は、同じ境遇にある多くの方々にとって大きな励みとなることでしょう。
ソースURL: https://www.yomiuri.co.jp/yomidr/article/20250731-OYT1T50064/