―ノバルティスファーマ株式会社―プレスリリース(2024/8/15)
皆さんは、PNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)という疾患をご存じですか?
2024年8月29日にノバルティス ファーマ株式会社主催のメディアセミナーに出席してきました。
PNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)について
PNHは、日本の指定難病62番に指定されており、主な症状である溶血(赤血球が破壊される症状)の重症度が中等症以上が対象となります。2022年度の特定医療費受給者証所持者は、1,035人と、とても患者数が少ない疾患です。しかし、軽症者を入れると、この約倍の2,000人位と言われています。また、アジア諸国(中国、日本、韓国など)で患者数が多いのが特徴です。
PNHは造血幹細胞の遺伝子の変異により異常な赤血球が作られる血液疾患です。
この疾患の赤血球は、補体(抗体の一種)の働きを制御する「楯」となる補体制御たんぱくがうまく作れないため、血管内で赤血球が破壊される血管内溶血と、赤血球の表面に蓄積された補体因子(攻撃対象マーカー)が肝臓や脾臓で白血球の攻撃の標的とみなされて破壊される血管外溶血が起こり、朝のおしっこがコーラ色(ヘモグロビン尿)になったり、息切れ、貧血、頭痛、疲労感、腹痛、など様々な症状が出てきます。溶血が起こっているときには、血栓症(血の塊が血管を詰まらせること)も起こりやすいので注意が必要です。
ファビハルタ🄬カプセル200mg開発経緯
初めは、血管内溶血をいかに止めるかが最初の治療目標として、補体C5阻害剤が開発されました。
しかし、これでは血管外溶血を止めることができず、ヘモグロビン量が正常値まで達せず持続性貧血の患者さんもいます。また、C5遺伝子多型の患者さんには、補体C5阻害剤の効きが悪いなどのことがわかってきました。
今回、販売されるファビハルタ(一般名:イプタコパン塩酸塩水和物)は、補体B因子阻害剤です。補体第二経路上流でB因子と結合してその活性を阻害することで、補体の増幅経路(補体活性化カスケード)にブレーキをかけて補体の働きを抑制し、血管内溶血と血管外溶血の両方をコントロールすることができます。
また、ファビハルタは単剤で使用できる唯一の経口薬(カプセル)として患者さんの負担を減らせる画期的な薬です。
しかしながら、この薬が使える患者さんの条件は、補体C5阻害剤による適切な治療を行っても、十分な効果が得られない患者さんに限ることとなっています。
患者さんの声
最後に、患者歴約20年の米田昌信さんの講演があり、治療によって「今まで息切れでタクシーを利用していた坂道を自分の足で登れるようになった」と述べられた時には感動し、セミナーが終了しました。
囲み取材で
囲み取材では、この薬に対する有害事象や患者さんの声を積極的に集めようと真摯に考えている企業姿勢も立派だと感じました。
今後、この薬の利用者が増え、QOLが劇的に改善されることを望んでいます。
演者・演題紹介
・ノバルティスファーマ株式会社
開発本部CRMデベロップメント本部 瀬恒 圭一郎氏
ファビハルタの開発経緯および適正使用に向けて
・大阪大学大学院 医学系研究科
血液・腫瘍内科学 招へい教授 西村 純一先生
発作性ヘモグロビン尿症(PNH)の治療と課題
・大阪大学大学院 医学系研究科
血液・腫瘍内科学 助教 植田 康敬先生
国際共同第Ⅲ相試験の結果から考えるPNH治療の展望
・PNH患者(患者歴約20年)米田 昌信さま
1/1000人の患者体験談:がまんしない人生を取り返すまで
患者会(難病ネットワーク調べ)
補足PNHに関係する患者会一覧(難病ネットワーク調べ)
・PNH CLUB https://www.pnhclub.jp/
・再生翼の会 http://www.iplus.jp/~tsubasa/index.html