東京大学・近畿大学・大阪大学・順天堂大学・宮城県立こども病院などの研究グループが長年取り組んできた医師主導治験の成果が実を結び、指定難病「進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)1型および2型」に対するフェニル酪酸ナトリウム製剤(販売名:ブフェニール®)の適応追加が承認されました。 これまでPFICの内科的治療は対症療法にとどまり、病気が進行すると肝移植が必要とされてきましたが、今回の承認により病気の仕組みに基づく薬物治療が初めて臨床現場で使えるようになります。 PFIC患者さんとそのご家族にとって、治療の選択肢が大きく広がる歴史的な一歩です。

💡 用語解説:「進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(PFIC)」とは?
主に乳幼児期に発症する遺伝性の難治性肝疾患で、日本の指定難病(指定難病338)に定められています。 遺伝子の異常により、肝臓から腸へ胆汁(消化を助く液体)を流す仕組みが障害されます。 その結果、黄疸・強いかゆみ・肝機能障害が生じ、進行すると肝硬変や肝不全に至ることがあります。 原因遺伝子の種類によって複数の病型(PFIC1・PFIC2など)があり、これまで内科的な根治治療がなく、重症化すると肝移植が必要とされてきました。

💡 用語解説:「ドラッグ・リポジショニング」とは?
すでに別の病気の治療薬として承認されている薬が、異なる病気にも効果を持つことを発見・実証し、新しい治療薬として活用する手法です。 今回のブフェニール®はもともと「尿素サイクル異常症」の治療薬として承認されていましたが、東京大学の林准教授らが肝臓に関する新たな薬理作用を発見したことで、PFICの治療薬としての開発が始まりました。 一から新薬を開発するよりも時間・コストを大幅に短縮できる点で、患者数の少ない希少疾患で特に注目される手法です。

なぜブフェニール®がPFICに効くのか

東京大学大学院薬学系研究科の林久允准教授らは、PFICの病態研究を進める中で、フェニル酪酸ナトリウム(NaPB)にこれまで知られていなかった薬理作用があることを発見しました。 NaPBは、肝細胞の胆汁側に存在し胆汁酸を排出するタンパク質「BSEP」の量を増やし、胆汁酸の排泄を促進する働きがあります。 PFICではこのBSEPの量や機能が低下することが病気の進行に関与しており、NaPBによってBSEPを増やすことで胆汁酸の排泄を改善するという、病気の仕組みに基づいた治療アプローチが可能となりました。

基礎研究から承認まで——約10年の道のり

この発見を起点に、林准教授らは順天堂大学・大阪大学・宮城県立こども病院など複数施設と連携し、PFIC患者さんを対象とした臨床研究と医師主導治験を実施しました。 医師主導治験とは、製薬企業ではなく医師が自ら企画・実施する治験のことで、希少疾患など企業単独では開発が難しい領域での治療薬開発に活用されています。 こうして得られた有効性・安全性のデータをもとに、製薬企業オーファンパシフィック社が承認申請を行い、今回の適応追加承認に至りました。

次の患者さんのための基盤「CIRCLe」も始動

研究グループは今回の開発経験を通じて、小児肝疾患の希少性ゆえに患者情報・試料が集めにくく新薬開発が進みにくいという課題を改めて認識しました。 この課題への対応として、小児肝疾患を対象とした患者登録研究「CIRCLe(サークル)」を立ち上げ、診断支援・情報収集・試料管理を一体的に行う基盤を整備しています。 現在は一般社団法人Delta Compassが運営を担い、国内外の医療機関と連携しながら次の診断法・治療法の開発を支える仕組みとして機能しています。

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※ 治療の適応・用法・用量などの詳細は、主治医または専門医療機関にご相談ください。本記事は承認情報の概要をお伝えするものであり、特定の治療を推奨するものではありません。

引用・参照元

※ 当記事は上記を参照し、難病ネットワークインフォメーション編集部が要約・解説したものです。

※ 最終確認:2026年9月

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