国立成育医療研究センターの仁科幸子部長らの研究グループは、乳幼児に発症する視覚の難病である「前眼部形成異常(ASD)・無虹彩症・小眼球症・無眼球症」について、東アジア人集団として初めての大規模な遺伝子解析を実施しました。 111名の患者さんを対象に独自開発の遺伝子パネルで解析した結果、ASD/無虹彩症の50.0%、小眼球症/無眼球症の37.5%で原因遺伝子を特定することに成功し、これまで報告されていなかった11の遺伝子変異も新たに発見されました。 本研究成果は、眼科学の国際学術誌「Ophthalmology Science」2026年号に掲載されています。

💡 今回の研究対象となった4つの視覚難病とは?
前眼部形成異常(ASD):胎児期に目の前半部分(角膜・虹彩など)が正常に形成されない先天性疾患の総称。
無虹彩症:光の量を調整する「虹彩(茶目)」が生まれつき欠損している疾患。10万人に1人という稀な遺伝性疾患。
小眼球症:眼球が生まれつき通常の約3分の2以下と極端に小さい先天性疾患。
無眼球症:生まれつき片方または両方の眼球が完全に欠損している先天性疾患。
いずれも視覚と心身の発達が急速に進む0〜2歳の時期に適切な診断と管理を行うことが、その後の障害の程度を大きく左右します。

💡 用語解説:「遺伝子パネル解析」とは?
特定の病気に関連する可能性のある複数の遺伝子を、一度の検査でまとめて調べる手法です。 今回の研究では、ASD/無虹彩症に関連する11遺伝子、小眼球症/無眼球症に関連する12遺伝子をそれぞれひとつのパネルにまとめ、次世代シークエンシングという技術を用いて高速・高精度に解析しました。 これにより「どの遺伝子のどの変異がこの病気を引き起こしているか」を効率よく調べることができます。

研究の3つの主な成果

  • ① 東アジア人初の大規模遺伝子解析で原因遺伝子を特定
    これまでこれらの疾患の遺伝的背景は欧米の研究が中心で、東アジア人を対象とした大規模解析は行われていませんでした。 今回111名を対象とした解析の結果、ASD/無虹彩症では50.0%、小眼球症/無眼球症では37.5%で原因遺伝子変異を特定。 さらにこれまで世界で報告されていなかった11の新規変異(病的バリアント)が発見されました。
  • ② 東アジア人特有の遺伝的背景を発見
    ASD/無虹彩症の原因遺伝子として、欧米では知られていなかった「CYP1B1」遺伝子の変異が日本人では重要な役割を果たしていることが明らかになりました。 これは東アジア人ならではの遺伝的特徴であり、今後の診断基準への反映が期待されます。
  • ③ 原因遺伝子によって緑内障・全身合併症のリスクが異なる
    原因遺伝子の種類によって、視力に深刻な影響を与える「緑内障」の合併リスクや、心疾患・難聴・歯の異常といった全身の合併症リスクが異なることが示されました。 これにより、遺伝子診断の結果をもとに、眼科以外の専門科と連携した先回りのケア計画が立てられるようになります。

患者さん・ご家族にとっての意義

これらの視覚難病は乳幼児期に発症しますが、原因遺伝子が特定されることで、同じ遺伝子変異を持つきょうだいへの予防的ケアや、将来の合併症リスクに備えた医療計画を早期から立てることができるようになります。 また今回開発された遺伝子パネルは、臨床での実用化が可能なレベルにあることが示されており、今後の診断体制の整備につながることが期待されます。 なお本研究は現時点では研究段階のものであり、実際の遺伝子検査を希望される方は主治医・専門医にご相談ください。

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引用・参照元

※ 当記事は上記を参照し、難病ネットワークインフォメーション編集部が要約・解説したものです。

※ 最終確認:2026年9月

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