日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社が2025年6月12日、肺線維症の治療薬として「ネランドミラスト」の製造販売承認申請を厚生労働省に行いました。この新薬は、これまで治療選択肢が限られていた肺線維症患者さんにとって大きな希望となる可能性があります。

ネランドミラストとは

ネランドミラストは、経口投与できる優先的ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害剤です。特発性肺線維症(IPF)および進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD)/進行性肺線維症(PPF)の治療薬候補として開発されており、2025年5月30日に厚生労働省から希少疾病用医薬品の指定を受けています。

対象となる疾患

特発性肺線維症(IPF)

  • 労作時の息切れ、長引く空咳、疲労感、虚弱などの症状が現れる
  • 主に50歳以上の男性に多く発症
  • 根本原因は明らかになっていない進行性の疾患

進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PF-ILD/PPF)

  • 関節リウマチや全身性強皮症などの基礎疾患が原因となることが多い
  • 呼吸器症状の悪化や病勢進行が特徴

これらの疾患は世界的にも深刻で、IPF患者は約360万人、PF-ILD/PPF患者は約560万人と推定されています。

臨床試験で実証された効果

承認申請は、2つの大規模な第3相臨床試験の結果に基づいています

FIBRONEER™-IPF試験

  • 36カ国、1,177人の特発性肺線維症患者が参加
  • ネランドミラスト9mg群、18mg群、プラセボ群に1:1:1で割り付け

FIBRONEER™-ILD試験

  • 44カ国、1,176人のPF-ILD/PPF患者が参加
  • 同様の試験設計で実施

両試験とも200名を超える日本人患者さんが参加し、主要評価項目を達成しました。52週時の努力肺活量(FVC)のベースラインからの低下を、プラセボに対して有意に抑制することが確認されています。

良好な安全性プロファイル

有害事象による治験薬の投与中止率は以下の通りでした:

FIBRONEER™-IPF試験

  • プラセボ群:10.7%
  • ネランドミラスト9mg群:11.7%
  • ネランドミラスト18mg群:14.0%

FIBRONEER™-ILD試験

  • プラセボ群:10.2%
  • ネランドミラスト9mg群:8.1%
  • ネランドミラスト18mg群:10.0%

深刻な予後改善への期待

日本ベーリンガーインゲルハイムの荻村正孝代表取締役は、「IPFと診断された患者さんは5年以内に2人に1人が亡くなっている状況」「PF-ILD/PPFの生存期間中央値は2.4~7.9年という報告もある」と述べ、新規治療薬への高いニーズを強調しています。

国際的な展開

ネランドミラストは米国で2022年2月にIPF治療薬として、2025年4月にPF-ILD/PPF治療薬としてブレークスルーセラピーに指定されています。IPFについては新薬承認申請の優先審査対象にも指定されており、中国や欧州連合でも申請が提出済みです。

今後の展望

この新薬が承認されれば、新しい作用機序を持つ経口薬として、肺線維症患者さんの治療選択肢が大幅に拡大することが期待されます。試験結果は既に2025年5月のNew England Journal of Medicine誌に掲載されています。

ソースURL: https://www.boehringer-ingelheim.com/jp/press-25-0612

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