千葉大学の横手幸太郎学長ら研究チームは、希少な早老症「ウェルナー症候群」の患者を対象に、ニコチンアミドリボシド(NR)を用いた世界初の二重盲検無作為化クロスオーバープラセボ対照試験を実施し、NRが動脈硬化の指標や難治性皮膚潰瘍、腎機能低下の改善に有効であることを明らかにしました。
ウェルナー症候群は、遺伝子変異によるDNA代謝とミトコンドリア機能の障害が特徴の希少疾患で、日本では人口100万人あたり9人と推定されています。20歳代から老化の兆候が現れ、動脈硬化や悪性腫瘍を若年期から合併しやすく、平均寿命は60歳未満とされています。患者の多くはサルコペニアや難治性皮膚潰瘍も発症し、生活の質(QOL)が大きく損なわれますが、根本的な治療法は確立されていませんでした。
今回の臨床試験では、NRを1日1000mg投与する群とプラセボ(偽薬)群を26週間ずつ交互に投与し、血中NAD⁺値や動脈硬化指標(CAVI)、皮膚潰瘍の面積、腎機能など多角的に評価しました。その結果、NR投与後は血中NAD⁺値が有意に上昇し、動脈硬化指標CAVIの改善、皮膚潰瘍の縮小、腎機能低下の抑制が認められました。また、安全性についても重大な有害事象は報告されていません。
この成果により、NRはウェルナー症候群における動脈硬化や難治性皮膚潰瘍の改善、腎機能障害の予防に有益な治療手段となる可能性が示されました。今後は、他の早老症や一般的な加齢性疾患への応用研究も期待されています。
ソースURL: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000987.000015177.html