千葉大学大学院医学研究院の平原潔教授・岩村千秋特任准教授らの研究グループは、順天堂大学との共同研究により、指定難病「肺高血圧症」の血管構造を悪化させる鍵となるタンパク質「MYL9/12」を世界で初めて特定しました。 マウス実験では、このタンパク質の働きを抑える抗体の投与によって血管の厚みや炎症が改善し、さらに患者さんの血中MYL9濃度が病気の重症度と相関することも確認されました。 本成果は2026年7月2日に米国心臓協会の国際医学雑誌「Circulation Research」に掲載されており、新しい治療法と診断法の両面での応用が期待されます。

💡 用語解説:「肺高血圧症」とは?
肺の血管が狭く硬くなることで血液が流れにくくなり、心臓に強い負担がかかる指定難病です。 息切れ・疲労感・動悸などの症状が現れ、進行すると心不全を引き起こすこともあります。 現在の治療法では、一度厚くなった血管を元に戻すことが難しく、根本的な治療法の開発が長年の課題となっています。 確定診断には「右心カテーテル検査」という患者さんへの負担が大きい検査が必要なことも課題のひとつです。

💡 用語解説:「血管リモデリング」とは?
血管が「硬く・厚く・狭く」なってしまう構造変化のことです。 肺高血圧症はこの血管リモデリングが進むことで症状が悪化していきます。 今回の研究では、このリモデリングを引き起こす原因タンパク質「MYL9/12」が特定されたことで、この変化を食い止める新しいアプローチの可能性が示されました。

研究の3つの成果

今回の研究では、以下の3つの重要な成果が得られました。

  • ① 病気を悪化させるタンパク質「MYL9/12」の特定
    血管が低酸素状態になると、血小板や異常肺血管内皮細胞からMYL9/12というタンパク質が放出されます。 このタンパク質が肺血管内の血栓に蓄積することで、血管壁が厚くなる変化(血管リモデリング)と炎症を引き起こしていることが明らかになりました。
  • ② 抗体投与でマウスの症状が改善
    肺高血圧症を発症したマウスにMYL9/12の働きを抑える抗体を投与したところ、血管の厚みが軽減されただけでなく、血栓や炎症も抑えられ、血流が改善しました。 これは将来の治療薬開発に向けた重要な基盤となる結果です。
  • ③ 血中MYL9濃度が病気の重症度を反映
    患者さんの血液中のMYL9濃度が肺高血圧症の重症度と相関することが確認されました。 これにより、負担の大きい右心カテーテル検査を補う、より簡便な病状評価の指標(バイオマーカー)となる可能性が示されています。

治療薬・診断法の実用化に向けた取り組み

研究グループはすでに「肺高血圧症の検出方法および治療薬・予防薬」として国際特許を出願しており、ヒト型抗体の作製にも成功しています。 さらに企業との共同研究により、血中MYL9濃度を臨床現場で測定するシステムの開発も進められています。

現時点ではあくまで基礎・前臨床研究の段階であり、実際の治療薬・診断薬として患者さんが利用できるようになるまでにはさらなる研究と臨床試験等が必要です。 しかしながら、治療の難しかった肺高血圧症の「血管悪化の仕組み」を分子レベルで解明したことは、患者さんにとって大きな希望となる研究成果です。

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※ 本研究は基礎・前臨床研究段階のものです。治療・診断への応用時期は未定であり、現時点で患者さんが直接利用できる治療法・診断法ではありません。

引用・参照元

※ 当記事は上記を参照し、難病ネットワークインフォメーション編集部が要約・解説したものです。

※ 最終確認:2026年9月

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