青森市在住の工藤麻美さん(34歳)は、指定難病のマルファン症候群を抱えながらも、分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」を遠隔操作して東京のカフェで接客業務を行っています。この革新的な働き方は、外出困難者に新たな社会参加の道を開いています。
分身ロボットによる新たな可能性
工藤さんは自宅のパソコンから、カメラやマイク、スピーカーを搭載した分身ロボットを操作し、東京・日本橋の「分身ロボットカフェDAWN ver.β(ドーン バージョンベータ)」で4年以上働いています。このカフェは「オリィ研究所」が運営しており、難病や障害を持つ「パイロット」たちが遠隔操作で接客サービスを提供しています。
マルファン症候群という先天性疾患を持つ工藤さんは、27歳の時に東京で手術を受けた際の合併症により、1ヶ月間生死をさまよう経験をしました。その後、体力の低下や様々な身体的症状により社会参加が難しくなり、実家に戻ることになりました。
社会とのつながりを取り戻す
「社会参加できないことへの劣等感や焦り、孤独感がありました。働く友人たちが月曜日は憂うつ、と言っていることさえうらやましかった」と工藤さんは当時の心境を語っています。2021年春、SNSで分身ロボットカフェのオープン情報を知り、すぐに応募したといいます。
現在、工藤さんは分身ロボットを通じて多くの利用客と交流し、特に増加している訪日客に対しては青森の魅力を伝える役割も担っています。また、大阪・関西万博でも分身ロボットが活躍し、レストランでの案内業務などを行っています。
広がる可能性
この技術は、場所や身体的ハンディキャップに関係なく働ける環境を提供するだけでなく、全国の同じ境遇にある「パイロット」との交流も生み出しています。工藤さんは「分身ロボットを使えば人手不足に悩む介護施設で利用者の話し相手もできるし、不登校の子は学校に通えるようになるかもしれない」と、この技術の可能性に期待を寄せています。
分身ロボット技術は、障害や病気を抱える人々の社会参加を促進し、誰もがどこでも輝ける社会の実現に貢献する可能性を秘めています。
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