献血や骨髄バンクのように、自らの体の一部を提供して誰かの命を救う。そんな新しい形の社会貢献が、山形県鶴岡市から始まろうとしています。その名も「献便(けんべん)」。健康な人の「うんち(便)」に含まれる腸内細菌を提供してもらい、難病治療に役立てるという、まさに「健康のおすそ分け」ともいえる画期的な取り組みです。

このプロジェクトを推進するのは、腸内細菌(腸内フローラ)研究のスタートアップ企業「メタジェンセラピューティクス株式会社」です。

なぜ「うんち」が薬になるの?

私たちの腸の中には、数百兆個もの細菌が生息し、健康を維持するために重要な役割を果たしています。しかし、潰瘍性大腸炎などの難病を抱える患者さんの中には、この腸内細菌のバランスが大きく乱れている方がいます。

「献便」とは、この乱れた腸内環境を正常に戻すための治療法「腸内細菌叢(そう)移植(便移植)」に用いられます。具体的には、

  1. 健康なドナー(提供者)から「うんち」を提供してもらう。
  2. その中から有用な腸内細菌だけを取り出す。
  3. 患者さんの腸に移植する。

この治療法により、患者さんの腸内細菌バランスを整え、病気の症状を改善させることが期待されています。

「健康のおすそ分け」という新しい考え方

「うんち」と聞くと、汚いものというイメージが先行するかもしれません。しかし、このプロジェクトでは、それを「誰かの健康を支える、価値あるもの」と捉え直しています。

健康な人の腸内にいる元気な細菌は、難病に苦しむ人にとっては「薬」そのもの。自分の健康を誰かのために役立てるという「健康のおすそ分け」というコンセプトは、これまでのドネーション(提供)にはなかった、心温まる新しい社会貢献の形です。

日本初の挑戦が山形県鶴岡市から始まる理由

この先進的な取り組みの拠点となっているのが、山形県鶴岡市です。同市には、慶應義塾大学の先端生命科学研究所があり、腸内細菌研究で世界をリードしてきました。メタジェンセラピューティクス社も、この研究所から生まれたスタートアップ企業です。

最先端の科学技術と、地域社会の協力が一体となることで、日本で初めての本格的な「献便」の仕組みづくりが進められています。

まとめ

これまで治療が難しかった病気に対して、「献便」という新しいアプローチが大きな希望をもたらそうとしています。山形県鶴岡市から始まるこの「健康のおすそ分け」の輪が、日本全国に広がり、一人でも多くの患者さんを救う未来が期待されます。

ソースURL: https://prtimes.jp/story/detail/Gx0najIPzWb

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