大阪大学と科学技術振興機構(JST)などの研究グループは、指定難病「全身性強皮症」の患者さんの血液や臓器を詳しく調べ、命にかかわる重症例に特徴的な免疫細胞の集団を発見しました。この成果により、重症化の予測や新たな治療法の開発につながる可能性が高まっています。
全身性強皮症とは
全身性強皮症は、皮膚や内臓が硬くなる自己免疫疾患で、国内に2万人以上の患者さんがいるとされます。症状は人によって大きく異なり、命にかかわる重症例もあれば、安定したまま経過する場合もあります。そのため、どのタイミングでどんな治療を始めるかが難しい病気です。
研究のポイント
- 重症例の特徴を発見
患者さんの白血球を1細胞ごとに解析した結果、重症の腎臓病変(腎クリーゼ)や進行性の間質性肺疾患を発症した患者さんの血液に、特徴的な免疫細胞の集団が増えていることが分かりました。 - 腎臓の重症例には「EGR1」遺伝子発現上昇の単球が関与
腎クリーゼを発症した患者さんの血液中では、「EGR1」という遺伝子の発現が高い単球が多く見られました。この細胞は腎臓に入り込み、有害なマクロファージに変化して腎障害を悪化させる可能性があります。 - 肺の重症例には「Ⅱ型インターフェロン」刺激を受けたT細胞が関与
進行性間質性肺疾患の患者さんでは、Ⅱ型インターフェロンの刺激を受けたT細胞が増加し、肺に入り込んで病気を進行させる可能性が示されました。
今後の期待
今回発見された細胞や遺伝子は、重症の臓器障害を予測するバイオマーカーや、新たな治療ターゲットになる可能性があります。患者さん一人ひとりに最適な治療選択や治療開始時期の判断に役立つと期待されています。
この研究成果は、科学誌「Nature Communications」に2025年6月17日に掲載されました。
今後、全身性強皮症の診断や治療に大きな進展が期待されます。
ソースURL: https://www.jst.go.jp/pr/announce/20250617/index.html