千葉大学の研究チームが、希少難病である早老症ウェルナー症候群の患者さんを対象とした世界初の臨床試験を成功させ、ニコチンアミド リボシド(NR)による治療効果を実証しました。この画期的な研究成果は、これまで有効な治療法が限られていたウェルナー症候群患者さんに新たな希望をもたらす重要な発見です。
世界初の二重盲検無作為化クロスオーバープラセボ対照試験
研究チームと成果
千葉大学の横手幸太郎学長をはじめ、同大大学院医学研究院 内分泌代謝・血液・老年内科学の前澤善朗講師、正司真弓助教、加藤尚也助教、同大予防医学センターの越坂理也准教授らの研究チームが、この世界初の臨床試験を実施しました。
厳格な試験設計
この臨床試験は、医学研究において最も信頼性の高い「二重盲検無作為化クロスオーバープラセボ対照試験」として実施されました1。これにより、治療効果を客観的かつ科学的に評価することができました。
ニコチンアミド リボシド(NR)による治療効果
3つの重要な改善効果を確認
臨床試験の結果、NRは以下の3つの症状に対して有意な改善効果を示しました。
- 動脈硬化指標の有意な改善
- 難治性皮膚潰瘍の有意な改善
- 腎機能低下の抑制
患者さんの生活の質向上への期待
これらの改善効果により、NRはウェルナー症候群の動脈硬化、難治性皮膚潰瘍の改善および腎機能障害の予防に有益であると考えられます1。患者さんの日常生活における困難な症状の軽減が期待されます。
ウェルナー症候群という病気
ウェルナー症候群は希少難病の一つで、早老症として知られています。この疾患の患者さんは、通常よりも早い段階で老化に関連した様々な症状が現れ、特に動脈硬化や皮膚潰瘍、腎機能障害などが深刻な問題となります。
国際的な評価と今後の展望
権威ある学術誌に掲載
この研究成果は、2025年6月3日に権威ある学術誌「Aging Cell」で公開されました。国際的な医学界からも高い評価を受けている証拠といえます。
希少疾患治療への貢献
今回の成功は、希少疾患の治療法開発において重要な一歩となります。患者数が少ないために研究が困難とされる希少疾患において、このような厳格な臨床試験が実施され、明確な治療効果が示されたことは極めて意義深い成果です。
患者さんとご家族への希望
これまでウェルナー症候群に対する有効な治療選択肢が限られていた中で、今回の研究成果は患者さんとそのご家族にとって大きな希望となります。特に、動脈硬化や難治性皮膚潰瘍、腎機能障害といった深刻な症状に対する具体的な改善効果が示されたことで、患者さんの生活の質の向上が期待されます。
千葉大学の研究チームによるこの世界初の臨床試験成功は、希少疾患治療の分野における画期的な成果として、今後の治療法開発にも大きな影響を与えることが期待されます。
ソースURL: https://www.chiba-u.ac.jp/news/research-collab/post_546.html