北海道大学大学院医学研究院の研究チームが、指定難病である「水疱性類天疱瘡」の水疱形成メカニズムを解明し、新たな治療薬開発への道筋を示す画期的な研究成果を発表しました。この発見により、従来の治療で問題となっていた副作用を大幅に軽減できる治療法の開発が期待されています。
水疱性類天疱瘡という病気
水疱性類天疱瘡は、全身に水疱を生じる指定難病の一つで、自らの免疫(自己抗体)が皮膚を構成するタンパクを誤って攻撃することで発症する自己免疫疾患です1。患者さんは皮膚に痛みを伴う水疱ができ、日常生活に大きな支障をきたします。
現在の治療の課題
現在はステロイドなどの免疫抑制剤を長期間使用する治療法が確立されていますが、本来必要な免疫も抑制してしまうことで感染症にかかりやすくなり、さらには糖尿病や骨粗鬆症などの副作用が深刻な問題となっています。
研究チームの画期的発見
研究体制
北海道大学大学院医学研究院の伊東孝政助教、氏家英之教授、同大学大学院医学院博士課程2年の木村彩萌氏らの研究グループが中心となって研究を実施しました。
重要な発見
研究チームは動物モデルを用いた実験により、自己抗体の存在だけでは水疱が発症されず、**好酸球カチオン性タンパク質(ECP)と好酸球由来神経毒(EDN)**という二つのタンパクが水疱形成に関与することを明らかにしました。
臨床での確認
さらに重要なことに、これらのタンパクが水疱性類天疱瘡患者さんの血清や皮膚でも実際に検出され、細胞実験を通じてその関与も確認されました。これにより、研究結果が実際の患者さんの病態と一致することが証明されました。
新たな治療法への期待
副作用の少ない治療薬開発
この発見により、ECP及びEDNを標的とした水疱性類天疱瘡の新たな治療法の有効性が示唆され、副作用の少ない治療薬の開発が期待されます。従来の免疫抑制剤とは異なり、病気の原因となる特定のタンパクを狙い撃ちする治療法が可能になる可能性があります。
患者さんへの恩恵
新しい治療法が実現すれば、患者さんは以下のような恩恵を受けることができると期待されます:
- 感染症リスクの軽減
- 糖尿病や骨粗鬆症などの副作用の回避
- より効果的な水疱の抑制
- 生活の質の向上
国際的な評価
この研究成果は、2025年6月9日にアレルギー・臨床免疫学分野で権威のある「Journal of Allergy and Clinical Immunology」誌にオンライン掲載されました。論文タイトルは「好酸球由来神経毒素及び好酸球カチオン性タンパクは、水疱性類天疱瘡における水疱形成の鍵となる分子である」となっています。
今後の展望
この基礎研究の成果を基に、今後は実際の治療薬開発に向けた応用研究が進められることが期待されます1。ECPとEDNを対象とした治療薬や治療法の開発により、水疱性類天疱瘡の患者さんにとってより安全で効果的な治療選択肢が提供される可能性が高まっています。
水疱性類天疱瘡の患者さんとそのご家族にとって、この研究成果は大きな希望となる重要な発見といえるでしょう。今後の治療薬開発の進展が注目されます。
ソースURL: https://www.hokudai.ac.jp/news/2025/06/post-1911.html