欧州連合(EU)域内の希少疾患患者がどこの国にいても質の高い医療にアクセスできるよう、EU全土の専門医療機関が連携した仮想的な医療専門家ネットワークがERN(European Reference Networks:欧州リファレンスネットワーク)です。2017年に設立され、現在24の疾患分野別ネットワークが活動しており、各ネットワークには欧州各国の高度専門医療機関が参加しています。物理的に患者を移送するのではなく、電子カルテ・テレカンファレンス・症例相談システムを通じて専門知識を共有する「バーチャルな専門医ネットワーク」です。

基本情報

正式名称European Reference Networks(ERN)
日本語名欧州リファレンスネットワーク
設立2017年
根拠欧州越境医療指令(2011/24/EU)
ネットワーク数24(疾患分野別)
参加医療機関1,000以上の高度専門医療センター(EU全土)
所管欧州委員会・EURORDIS(患者代表として参画)
情報サイトhttps://health.ec.europa.eu/rare-diseases-and-european-reference-networks_en

💡 用語解説:欧州越境医療指令とは?
EU加盟国の患者さんが他のEU加盟国で医療を受ける権利を定めた指令(Directive 2011/24/EU)です。EU域内では国境を越えた医療利用が認められており、ERNはこの枠組みを活用して、患者さんを物理的に移送する代わりに、電子的な症例相談・専門知識の共有によって「専門家が患者のところに来る(バーチャルに)」仕組みを実現しています。

ERNとはどんな仕組み?

ERNの基本コンセプトは「患者を動かすのではなく、知識を動かす(Move knowledge, not patients)」です。希少疾患患者は診断・治療のために自国から遠く離れた専門病院を探して移動することが多いですが、ERNでは各国の専門医が安全な電子システム(CPMS:Clinical Patient Management System)を通じて症例を共有し、欧州全土の専門医チームがオンラインで議論して診断・治療方針を決定します。

主な24のERNネットワーク

ERNは24の疾患分野別ネットワークから構成されています。主なネットワークには以下が含まれます。神経筋疾患(ERN EURO-NMD)・希少神経疾患(ERN-RND)・先天性心疾患(ERN GUARD-HEART)・免疫不全症・自己炎症性疾患・自己免疫疾患(ERN RITA)・骨系統疾患(ERN BOND)・皮膚疾患(ERN Skin)・小児がん(ERN PaedCan)・内分泌疾患(Endo-ERN)・眼疾患(ERN-EYE)・希少肝疾患(ERN RARE-LIVER)・希少肺疾患(ERN-LUNG)・希少腎疾患(ERN eUROGEN)などです。

患者へのメリット

ERNの最大のメリットは、EU域内の患者さんが「自分の国に専門医がいない希少疾患」についても、国外の専門医による症例検討を受けられるようになったことです。CPMS(臨床患者管理システム)を通じて担当医がERNに症例を登録し、欧州各地の専門医による多職種チームがオンラインで検討します。患者さんは必ずしも国外に渡航する必要がなく、自国の担当医を通じて欧州トップクラスの専門的医療へのアクセスが可能になっています。

日本の難病医療ネットワークとの比較
日本では希少疾患・難病の専門診療体制として「指定難病医療費助成制度」・「小児慢性特定疾病医療支援制度」・難病診療連携拠点病院などが整備されていますが、EU全域をカバーするERNのような国際的なバーチャル専門医ネットワークは日本単独では構築困難です。国際希少疾患研究コンソーシアム(IRDiRC)などの枠組みを通じた日本とEUの連携が、患者さんへの恩恵につながる重要な国際協力の一形態です。

引用・参照元

※ 最終確認:2026年6月

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