FM FUJIの番組『Bumpy』で2024年11月13日、フリージャーナリストの松田宗弘さんが難病患者の就労について解説しました。山梨県庁が2024年4月入庁の職員採用で全国初の「難病患者枠」を新設し、難病患者3人を一般行政職として採用したことが報じられました。

指定難病の現状と社会的認知度

厚生労働省の難病法が定める「指定難病」は現在348あり、重症だと医療費が助成されます。病名としては、筋肉が次第にやせ、力を失う「ALS」、手が震え、筋肉が硬化する「パーキンソン病」、免疫が間違って自身を攻撃する「膠原病」、遺伝性筋疾患の「筋ジストロフィー」などがあります。

山梨難病連の川手代表幹事は「難病の社会的認知が足りていない」と強調しており、難病はいつ、だれが疾患してもおかしくないのに、難病への認知・理解が足りないため、いったん疾患すると「もう、ダメだ」と悲観し閉じこもる人が少なくないと指摘しています。難病連や患者団体、県の「難病相談・支援センター」は20年以上の歴史があるのに「多くの県民がその存在さえ知らない」という課題があります。

全国初の難病患者枠での採用

山梨県庁が2024年4月入庁の職員採用で新設した「難病患者枠」では、採用対象年齢を18~35歳とし、合格者については人事課が個々の病状を事前に詳しくヒアリングし、配属先の責任者に説明しています。給与など待遇、勤務時間も他の職員と同じです。

県人事課担当者によると、「配属から半年、業務に支障があったという報告はない。難病枠の職員も、他の職員も、同じ勤務時間や休暇制度で執務している。今の制度で対応できるため、新たな制度やルールを設けたり、特別に予算をつけたりしていない」ということです。

柔軟な勤務体制の活用

就業時間は午前8時半から午後5時15分で、1日の労働時間は昼の1時間休憩を除く7時間45分となっています。疾病で朝の通勤が大変な場合、通勤途中で具合が悪くなり急きょ病院に行き定時出勤に遅れる場合、勤務中の体調不良やそれに伴う通院などによる早退などがある場合、「早出遅出勤務」「有給休暇」や、通院や受診に必要時間分を休める「傷病休暇」を活用できます。

また、病院に行くほどでなければ、健康管理室などで休むことができ、その際は1時間の休憩を分割・延長・追加して使えます。

難病患者の就職率の課題

難病患者の就労全体としては課題があります。県内に7カ所のハローワークがあり、山梨労働局就業対策課によると、2024年度の新規求職件数は、難病ではない「精神障害」などを含む数字で前年度比5.8%増の146件でした。このうち就職できたのは58件で、就職率は40%を切りました。

また、県の「難病相談・支援センター」への就労相談(延べ件数)は、2024年度は166件でしたが、就職できた人は29人でした。いずれも就職率は40%に達していません。

就職率を上げるには、県の「難病枠」のような「枠」が民間企業へも広がること、また、雇用者全体の中に決められている現行の「障害者枠」と同様に、「難病枠」を国が設ける必要があると指摘されています。取材に答えたALS患者のご家族は「難病患者が生きやすい社会は、すべての人が生きやすい社会」と話しています。

ソースURL: https://news.radiko.jp/article/station/FM-FUJI/129263/

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