東北大学の豊原敬文教授・阿部高明教授・青木正志教授らの研究グループは、京都大学・国立精神・神経医療研究センター・慶應義塾大学との共同研究により、指定難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」の病態にミトコンドリアの機能異常が関与することを確認し、ミトコンドリア機能を高める低分子化合物「MA-5」がALSの病態を改善する可能性を示しました。 ALS患者さん由来のiPS細胞から作製した運動神経細胞や皮膚線維芽細胞を用いた検証で、MA-5がATP産生やミトコンドリア機能を高めることが確認されています。 本研究成果は2026年9月23日に国際学術誌「JCI Insight」に掲載されました。

💡 用語解説:「筋萎縮性側索硬化症(ALS)」とは?
運動神経細胞が徐々に障害され、全身の筋力が低下していく指定難病です。 手足の動かしにくさや言葉のもつれ、嚥下困難などが現れ、進行すると呼吸筋も障害されます。 原因の多くは不明ですが、一部はSOD1遺伝子などの遺伝子変異が関与することが知られています。 現在、病気の進行を止める根本的な治療法は限られており、新しい治療標的の解明が急務とされています。

💡 用語解説:「ミトコンドリア」と「MA-5」とは?
ミトコンドリアは細胞の中にある"エネルギー工場"で、生命活動に必要なATP(エネルギー分子)を産生します。 神経細胞はエネルギー消費が大きいため、ミトコンドリアの異常は神経疾患の発症・進行に深く関わると考えられています。

MA-5(Mitochonic acid 5)は、ミトコンドリアの働きを改善する目的で開発された低分子化合物です。 今回の研究では、ALSモデルのショウジョウバエや患者由来の細胞に対して効果を検証しました。

研究の背景と方法

ALSでは運動神経細胞のエネルギー産生を担うミトコンドリアの異常が病態に関与すると考えられてきましたが、その詳細なメカニズムや治療標的としての可能性は十分に明らかになっていませんでした。 今回の研究では以下の3種類のモデルを用いて、MA-5の効果を段階的に検証しました。

  • ① 変異SOD1型ALSモデルのショウジョウバエ
    MA-5の投与により、低下していた運動機能・ATP産生・ミトコンドリア膜電位が改善することを確認しました。
  • ② ALS患者由来の皮膚線維芽細胞
    患者から採取した皮膚の細胞を培養し、MA-5のATP産生・ミトコンドリア機能への効果を検証しました。
  • ③ ALS患者由来のiPS細胞から作製した運動神経細胞
    患者さんの細胞から作られた運動神経細胞でもMA-5が同様の改善効果を示すことが確認されました。

研究の意義と今後の展望

今回の研究で用いた患者由来iPS細胞は、SOD1遺伝子変異型のALSだけでなく、さまざまなALSの病型(異なる遺伝子変異や孤発性ALSを含む)に由来するものが含まれており、複数の病型でMA-5の効果が確認されました。 これは「ミトコンドリア機能異常」がALSに共通する病態である可能性を示唆しており、病型を問わず適用できる治療標的になりうることを示す点で重要な意義があります。

研究グループは、今回の成果がさまざまなALSの病型に共通するミトコンドリア機能異常を標的とする研究の基盤となることを期待しています。 現時点ではあくまで基礎研究段階であり、MA-5が実際の治療薬として患者さんに使えるようになるにはさらなる研究と臨床試験が必要です。

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※ 本研究は基礎研究段階のものです。現時点で患者さんが直接利用できる新しい治療法ではありません。

引用・参照元

※ 当記事は上記を参照し、難病ネットワークインフォメーション編集部が要約・解説したものです。

※ 最終確認:2026年9月

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