米国Ionis Pharmaceuticals社は2026年9月3日、超希少疾患「アレキサンダー病(AxD)」を対象とした治療薬「ザンバストロ(一般名:ジルガネルセン)」について、米国FDA(食品医薬品局)の承認を取得したと発表しました。 アレキサンダー病に対して世界で初めて承認された疾患修飾療法(病気の根本的な原因に働きかける治療)であり、これまで症状の管理にとどまっていた治療に大きな転換をもたらします。 日本への申請は2027年を目指しており、国内の患者さんへの治療提供に向けた動きとして注目されます。
💡 用語解説:「アレキサンダー病(AxD)」とは?
脳内の「アストロサイト」という細胞に「GFAP(グリア線維酸性タンパク質)」が過剰に蓄積することで、神経細胞やミエリン(神経を覆う絶縁体)が障害される超希少疾患です。 GFAP遺伝子の変異が原因で発症し、乳幼児期から成人期まで様々な年齢で発症します。 進行すると運動機能や認知機能の低下、嚥下障害などが生じ、発症から14〜25年で死に至ることが多いとされています。 世界で100万〜300万人に1人という超希少疾患で、これまで根本的な治療法はありませんでした。
💡 用語解説:「RNA標的療法(アンチセンス療法)」とは?
タンパク質が作られる前段階の「メッセンジャーRNA(mRNA)」に結合し、そのタンパク質の産生を抑える治療法です。 アレキサンダー病ではGFAPが過剰に作られることが病気の原因のため、ザンバストロはGFAPを作るmRNAの前段階(プレmRNA)に結合してGFAPの産生を減らすことで、病気の進行を抑えようとします。 投与は3か月に1回、腰椎穿刺(脊椎に針を刺す)によって脊髄液に直接注入します。
承認を裏付けた臨床試験の結果
FDAの承認は、8カ国13施設で実施されたグローバル臨床試験の結果にもとづいています。 1.5歳〜53歳のアレキサンダー病患者54名が参加し、多くは子どもでした。
主要評価項目として「10メートル歩行テスト(歩行速度の評価)」が用いられ、5歳以上の患者において、ザンバストロ投与群の歩行速度が安定を維持した一方、対照群では33.3%低下しており、この差は統計的に有意でした(p=0.041)。 2〜4歳の小児では、粗大運動機能の改善が確認されました。 また副作用については、重篤な有害事象の発生率がザンバストロ群より対照群で高く、安全性プロファイルは良好とされています。
日本への申請は2027年を目指す
2026年6月、Ionisは欧州・日本を含む米国以外の地域での開発・販売権をイタリアの製薬企業Recordatiに付与する契約を締結しました。 Ionisの発表によると、欧州および日本への申請は2027年を予定しており、日本国内での正式な審査・承認を経て患者さんへの提供が実現する見通しです。
承認にあわせてFDAは「希少小児疾患優先審査バウチャー(PRV)」をIonisに付与しました。 これは希少小児疾患の治療薬開発を促進するため、承認後に別の薬の審査を優先的に行う権利を与える制度です。
患者団体「End Alexander Disease」の代表であり、アレキサンダー病の子を持つ母親でもあるEmily Petty氏は、今回の承認について「診断を受けることが不確実性と治療法がないという現実を伴っていた時代が変わる。"どう管理するか"から"どう治療するか"に会話が変わる」と述べています。
🔗 詳細情報はこちら
- Ionis Pharmaceuticals 公式プレスリリース「ZANVASTRO™ approved by the FDA as the first and only disease modifying treatment for Alexander disease」(英語・2026年9月3日)
- ZANVASTRO 公式サイト(英語)– zanvastro.com
※ 現時点での承認は米国のみです。日本での承認申請は2027年を予定しており、国内での使用可能時期は未定です。
※ 治療に関するご相談は、必ず主治医または専門医療機関にご相談ください。
引用・参照元
※ 当記事は上記を参照し、難病ネットワークインフォメーション編集部が要約・解説したものです。
※ 最終確認:2026年9月






